精神疾患レジストリ推進協議会
ご挨拶
精神疾患レジストリ(マイレジストリ)参加へのお願いとご挨拶
国立精神・神経医療研究センター
中込 和幸

マイレジストリにご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。
一般に、疾患のレジストリとは、「患者さんが何の疾患でどのような状態で存在しているかを集めたデータバンク」と定義されます。がんや糖尿病の領域ではすでに構築され、患者さんの治療に役立つ研究開発に使われています。精神科領域においても気分障害や統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害、自閉症スペクトラム及び神経発達障害に関連するものがありますが、いずれも海外のものです。わが国では、平成30年度に「レジストリの構築・統合により精神疾患の診断法・治療法を開発するための研究」が日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究事業(精神障害)の支援を受けて開始し、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(以下「当センター」)と日本精神神経学会が連携しながら、オールジャパン体制でその構築を進めています。
現在、精神科領域では、臨床症状に基づいて診断が行われていますが、糖尿病における血糖のように客観的な指標はありません。その結果、精神疾患の病因・病態解明研究はなかなか進みません。米国では、診断を超え、神経回路に関連づけられた臨床症状を中心に据えた研究手法が取り入れられています。とくに、患者さん一人一人に合わせた治療(個別化医療)を実現するためには、幅広い診断カテゴリーにまたがる臨床症状の生物学的病態を明らかにすることが大事で、そのためには大規模な疾患レジストリによる研究基盤を構築する必要があります。
また、マイレジストリでは縦断的な経過を追跡しますので、特定の治療後の予後や転帰及びそれらに影響を及ぼす臨床情報や生体情報を探索することが可能になります。日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会、当事者団体とも連携し、大規模なレジストリデータの収集を目指し、当事者のニーズにも応えうるレジストリを実現して参ります。企業にとっても、研究開発や薬事審査で必要な情報をレジストリデータから得ることが可能になります。生物学的に均質な集団への層別化、その病態の解明によって、医薬品や医療機器、再生医療等製品等の新規医療技術の開発につなげることも目指します。
皆さまのご協力を得て、精神科領域における個別化医療の実現と、精神医療の標準化の促進を通じて、多くの患者さんやその家族の社会参加や幸福感の実現に貢献できると信じております。